多額の借金を抱え、返済の目処が立たなくなった時の手段のひとつに債務整理があります。
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産といった選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。特に、自己破産は借金のほとんどが免責されることもあり、注目されています。
しかし、自己破産をしてしまうと、退職金が没収されるという話もあり、不安を覚える人も多いでしょう。
そこで今回は、自己破産をした場合の退職金について解説し、退職金が没収されないケースや退職金を隠すことは可能かどうかについて説明していきます。
また、自己破産と退職金に関するQ&Aもご用意しました。
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自己破産をした場合の退職金について
自己破産をした場合の退職金について3つのケースに分けて解説します。
ケース1:退職の予定がないケース
自己破産を行う際、まだ退職をしていないケースについて解説します。
このケースでは「退職金見込額の1/8を破産財団に組み入れるとする」という裁判所がほとんどです。
具体的には、現在退職すると仮定して受け取れる退職金の見込み額のうち、1/8が破産財団に組み入れられるということです。
ただし、裁判所によって扱いが異なる場合があるので注意が必要です。
ケース2:近い将来に退職予定のケース
退職したが退職金をまだ受け取っていない、または近い将来退職するケースについて解説します。
このケースでは「退職金の1/4が破産財団に組み入れ」となります。
近く退職予定の場合、まだ退職金を受け取っていないため、全額が破産財団に組み入れられることはありません。元々、退職金は3/4が自由財産として扱われるため1/4を限度として破産財団に組み入れるということになります。
ケース3:既に退職済みで退職金も銀行口座へ入金済みのケース
すでに退職し、退職金を受け取っているケースの場合は、現金または預貯金と同様に扱われます。これは、退職金とその他現金と預貯金と区別がつかないためです。
そのため、その他の現金や預貯金と合わせて考えます。
退職金を含めた現金については、99万円を超える分が破産財団に組み入れられます。
退職金が銀行口座にあって、その預貯金の合計が20万円を超える場合は、預貯金の全額が破産財団組み入れの対象となります。
自己破産で退職金が没収されないケース
自己破産を行う場合、退職金が没収されるかどうかが懸念されるところです。実際に自己破産をした場合、退職金が没収されないケースについてを徹底解説します。
同時廃止になる場合
「退職金の4分の1または8分の1」と他の財産を併せても、破産手続費用を支払うのに足りない場合には、同時廃止となります。
具体的には、退職金の4分の1または8分の1が20万円未満の場合、退職金は自由財産となり、他の財産も合わせて破産手続費用を支払うのに不足するのであれば、同時廃止となり退職金は没収されないということになります。
差押え禁止財産に当たる場合
差押禁止財産にあたる退職金も存在します。そのため、以下のような退職金は、没収の対象になりません。
- 中小企業退職共済制度による退職金
- 小規模企業共済制度による退職金
- 確定拠出年金
- 確定給付企業年金
- 厚生年金基金
「中小企業退職金共済制度」や「小規模企業共済制度」は、企業が加入している制度の一つです。この共済から退職時に退職金を受け取ることができます。
「社会福祉施設職員等退職手当共済」は、主に福祉施設で働く職員向けの退職金制度です。
これらの制度から支払われる退職金は、差押え禁止のため破産財団による組み入れ対象外となり、支払額に関わらず全額を残すことができます。
自己破産の際、退職金を隠すことは可能?
自己破産の際退職金を隠すことはできるのでしょうか。自己破産を検討されている方の中にはこのような疑問を持った方もいるかもしれません。
結論を述べますと、自己破産の際に退職金を隠し通すことはほぼ不可能です。
まず、自己破産の手続きには退職金見込み額証明書の提出が必要です。これによって退職金の額が調べられます。
これを提出せずに意図的に退職金を隠すと、最悪の場合、自己破産が認められなくなる恐れも出てきます。
つまり、退職金を隠すことで、自己破産手続きに影響を与えてしまうためです。
【注意】故意に隠すと財産隠しにあたる
自己破産時に財産隠しをすることは絶対にやめてください。破産手続きをする際に退職金を隠す行為が発覚した場合には大きなリスクが伴います。
まず、財産隠しは免責不許可事由に該当します。そのため、免責が認められない可能性があります。その場合、借金は減りません。
また、悪質な財産隠しの場合には詐欺破産罪として処罰される恐れもでてきます。このような犯罪に問われた場合には、懲役または罰金が科せられます。
財産隠しが発覚すれば、自己破産が失敗するだけにとどまらず、刑事罰も受けることがあります。どのような理由があっても、財産隠しは絶対に避けるべきです。
退職金見込み額証明書を提出せずに退職金を意図的に隠す行為はほとんど確実に発覚すると考えてください。
退職金を含め全ての財産について正確かつ公正な状況を報告することが大切です。
自己破産には退職金見込額証明書の提出が必要
自己破産の際、退職金見込額証明書(退職金計算書)の提出が原則必要です。この証明書は、会社に作成してもらい、取得する必要があります。
さらに、自己破産の申請の際に必要な「財産目録」には、退職金の見込額も必ず記載する必要があります。この財産目録には、所有する財産すべてが記載されている必要があります。
この一つに退職金も含まれるのです。
自己破産と退職金に関するよくある質問(Q&A)
自己破産と退職金のよくある質問をまとめました。
Q:退職金見込み額証明書の申請で会社に自己破産がバレませんか?
A:退職金見込み額証明書は自己破産以外でも利用するため問題ない
退職金見込み額証明書を勤務先に作成を依頼する際、提出先や理由について聞かれることがあります。ここで自己破産をすることがバレてしまう可能性もありますので、答えには注意が必要です。
「住宅ローンや教育ローンを組むために必要」「娘の奨学金の保証人になるために提出する必要がある」「FPに老後の資金相談をするために確認したい」などと自己破産以外の理由を用意することが可能です。
Q:アルバイトですが、退職金見込み額証明書は必要ですか?
A:アルバイトの場合、退職金見込み額証明書は不要となるケースがほとんどです。
他にも、正社員であっても入社間もなく勤続年数が短い場合(5年未満の場合)や、雇用期間の定めがある契約社員やパートの場合も退職金見込み額証明書の提出は必要ないケースがほとんどです。
このような立場の場合、退職金が出ないことがほとんどだからです。
Q:会社が退職金見込み額証明書を発行してくれない場合は提出不要ですか?
A:就業規則などで確認が必要です。
勤務先に作成を依頼することが困難な場合は、就業規則に記載された「退職金規程」を確認し、自分で計算する必要があります。
その計算結果と就業規則を一緒に裁判所に提出すれば認めてもらえます。
注意したいのは会社の規定で就業規則の持ち出しが禁止されている場合があることです。また、退職金の計算方法がわからない場合もあるでしょう。
そのような場合には司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
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自己破産時の不安は専門家への相談で解消できる
自己破産は、多くの人が司法書士や弁護士などの専門家に依頼します。
一般の方がひとりで自己破産の手続きをすることは非常に難しいためです。
退職金に関しても、会社にバレることを防ぎたい場合や、なるべく多くの退職金を残す方法を相談できるといったメリットもあります。
ひとりで悩まず、債務整理に強い専門家に相談することをおすすめします。
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まとめ
今回は自己破産における退職金についてわかりやすく解説してきました。
基本的に退職金は、自己破産の手続きをおこなう直前までに既に入金されてきている場合は、破産財団に組み入れとなります。
退職金の見込み額があり、退職金を受け取る権利がある場合もまた、一定のルールに従ってその一部が破産財団に組み入れられ、結果的に債権者に分配されることとなります。
ただし、この他にも退職金にまつわる様々な仕組みや決まりがあるため、重要なことは自己破産の手続きに詳しい司法書士へ相談をするということになります。
当サイトでは、自己破産など債務整理に強い弁護士/司法書士を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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